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白老酒季129号

□薫風 〜社長便り〜
□HIDE AWAY 〜酒蔵お婿さん通信〜
□会長だより
復興への努力 品質改良其の3 博覧会、共進会の参加

 

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白老酒季129号

 


 

 

 

Vol.54 梅仕事もひと段落、秋を待つお酒も順調に熟成しています 

 

このたび、令和8年7月28日に発生した熊本地方を震源とする地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早く平穏な日々が戻りますことを、蔵人一同、心よりお祈り申し上げます。

連日の厳しい暑さが続いておりますが、皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。

今月は「名残の夏と秋の実り、季節限定の味わい特集」をお届けいたします。

蔵では、今年の梅仕事もひと段落し(梅干しの天日干しはもう少し続きますが…)、梅酒・梅干し・梅酢も順調に仕上がり、皆様に味わっていただける日を楽しみにしております。
また、先日には夏の恒例行事「呑み切り」を無事に終えました。今年もお酒は順調に熟成し、秋に向けて自信を持ってお届けできそうです。

とくに8月27日発売の「若水純米冷やおろし」は、ほどよく熟し、秋の味覚に寄り添う味わいに育ちました。
また、9月17日解禁の「白老梅ヌーボー2026」もご予約を承っております。
今年も皆様へお届けできることを嬉しく思っております。

少し前になりますが、先月開催した「第5回 ハクロウこども夏まつり」には、今年も多くのご家族にお越しいただき、酒蔵が子どもたちの笑顔であふれました。
地域の皆様のご協力のもと、お囃子や子どもたちの手づくり企画、縁日などを開催し、中庭では仕込み水を引いたプールやミストで元気いっぱいに遊ぶ子どもたちの姿が見られました。山から湧き出る仕込み水が、人と人とのご縁をつなぎ、酒蔵が地域や学校を結ぶ場所になれたことを、とても嬉しく感じています。

紙面では、美浜町産の無農薬グレープフルーツを使った新作リキュールや、ご好評いただいております「佐布里梅のうめしろっぷ」、使いやすい酒粕生ペーストや1kg入りの熟成酒粕など、この季節ならではの商品をご紹介しております。
暑い残夏も健やかに、そして楽しくお過ごしいただけましたら幸いです。

昨年の「令和の米不足」以降、酒米価格は大きく上昇し、今年も酷暑による作柄への影響が心配されています。
白老の酒造りは、農家の皆様が丹精込めて育ててくださるお米、山から湧き出る水、そして白老を支えてくださる皆様とのご縁があってこそ続けることができます。
その一つひとつの恵みを大切にしながら、蔵人一同、まもなく始まる酒造りを前に心を込めて励んでまいります

どうか夏のお疲れには十分お気をつけいただき、健やかにお過ごしください。


2026年8月吉日
澤田酒造株式会社 澤田 薫

 

 


 

Vol.73「飲まない自由」の時代に、酒を飲む意味を考える

 

「最近はあまりお酒を飲まなくなった」そんな言葉を耳にすることがあります。実際、日本だけでなく世界中でアルコールを飲む人は減少傾向にあります。健康志向や働き方の変化、多様な価値観の広がりによって、お酒を飲まないという選択は、もはや特別なことではない世界になりました。


私はむしろ「飲まない自由」が当たり前になった今だからこそ、お酒を飲む意味や姿勢が、これまで以上に問われる時代になったのではないか?と思います。


酒は人を楽しませるものです。悲しみを忘れさせてくれるものです。嬉しい日には喜びを分かち合い、つらい日には心をそっと支えてくれる存在でもあります。


だからこそ、飲めない人、飲みたくない人、それぞれの事情を尊重することがお酒を愛する者の礼儀だし、迷惑をかけてはいけないと思います。


私自身、お酒が大好きです。そして、飲酒には意味がある。意義がある。時には大義があると信じています。


昔、人は盃を交わしました。それは酔うためではなく、同じ酒を口にし、信頼を確かめ、感謝を伝え、心を通わせるためでした。だから私は、お酒を理由にしたあらゆるハラスメントに反対です。酔った勢いで、さまざまな形で誰かを傷つけることは、本来の酒文化とは決して相容れません。


お酒は、酔うためのものでもあります。泥酔してもいいと思います 。
ただ、酔いを言い訳にしてはいけない。それだけは、忘れたくありません。


これから「飲む人」はさらに減るかもしれません。しかし「意味のある一杯」は、きっと残ります。


私が目指すのは、知多半島西海岸の風土や歴史、人々の営みを感じてもらえる一杯です。その土地を味わい、その時間を楽しみ、人とのつながりを深める。そんな一杯でありたいと願っています。


酒蔵として酒を造るだけでなく、酒を嗜む文化も伝えていく。


それもまた、私たち酒蔵の役目だと思っています。

 

 


 

その五十五
明治時代の知多酒18 「復興への努力 品質改良其の3 博覧会、共進会の参加」

 

豊醸組は販路拡張、、宣伝、品質の向上など目的として、博覧会、共進会、品評会などに積極的に参加しており、その一部を紹介します。

「下り酒」とは江戸時代に、関西や中部地方から船で江戸に運ばれた酒のことです。


<第3回知多郡物産共進会> 
この共進会は明治22年第1回が開催され、24年に第2回が開催されました。これらは農産共進会というべき性格のもので、農産物数種が出品されたにすぎず、明治25年10月25日より、半田光照院において開かれたこの3回目から本格的な催しとなっていきます。


「郡内農工業水産等各種ノ物産ヲ募集シ其知巧ヲ闘ハシ其優劣ヲ較ヘ奨勵鼓舞シテ以テ其改良ヲ促シ進歩発達ヲ計ルニ在リ(郡内の農業・工業・水産業など、さまざまな分野の産物を集め、それぞれの工夫や技術を競い合い、優れたものを評価して励ますことで、産業の改良と発展を促すことを目的とする。)

として、今回からは工産物を加え出品は18種に及んだ。この裏には稲生治右衛門の活躍がありました。


「本会は初め農産共進会として知多郡勧業会に諮問されしを稲生同会員は之を擴充して弘く濃厚産物に及ぼすへしとの動議を提出し、部長之を容れ遂に本会を成すに至れりと聞く(この会は当初、農産物を対象とする共進会として知多郡勧業会に諮られました。しかし、同会員の稲生氏が、対象をさらに広げ、幅広い産物を扱うべきだと提案しました。その意見が部長に受け入れられ、最終的に今回の共進会が開催されることになったといいます)」(豊醸組報告第79号)。



豊醸組からは72点の出品(出品者63名)があり、これらの酒類は「学理、技術、経済ノ三者ヲ主トシ物産ノ改良進歩ト販路ノ擴張ヲ誘起シ時勢ノ推遷ヲ考ヘ現今及将来ニ実益アラシムル(学問的な知識・技術・経済の三つを重視し、産物の改良と進歩、販路の拡大を促すとともに、時代の変化を見据え、現在と将来に実際の利益をもたらすことを目指す)」(第三回知多郡物産共進会酒類審査内規第1條)目的によって、「出品物質ノ良否ニ着目スル外販路ノ廣狭、カカクノ高低、セイゾウノ多寡ナド四隅ニ渉リ観察(出品物の品質の良し悪しだけでなく、販路の広さ、価格の高低、生産量の多寡など、さまざまな観点から総合的に評価する)」(同第2條)して審査が行われた。


また、「酒類ハ飲用品ナルヲ以テ其審査ヲ為スニ当リテ衛生上ニ於ケル黙ヲ観察スルヲ要ス(酒類は口にするものであるため、審査にあたっては、品質だけでなく衛生面にも十分注意して確認する必要がある)」(同第6條)として、サリチル酸の含有についても注意が払われました。


審査は10月12日より19日まで行われ、20日光照院において褒賞授与式が開催されました。


その時の模様は「門の内外には国旗を交差し式場は境内松樹の間に設け周囲に幕を繞らし中央に知事代理の席をそなえへ左右には代議士、縣會議員、郡會議員、町村長及ひ郡長、群吏、区裁判所検事、警察署長、直間税分署長等着席(門の内外には国旗が交差するように掲げられ、式場は境内の松の木々の間に設けられました。周囲には幕が張られ、中央に県知事代理の席が用意されました。その左右には、代議士、県会議員、郡会議員、町村長をはじめ、郡長や郡の職員、区裁判所検事、警察署長、直接税・間接税分署長などが着席しました)」し、まず郡長が知事代理の前に進んで審査報告を行いました。その酒類に関する部分は以下の通りです。

 

酒類ハ本群物産ノ巨襞(の衣を手に)ニシテ其盛衰ハ即チ群ノ盛衰ト云フモ可ナリ是ヲ以テ当業者ノ勉励衆人ノ注目他ノ物産ノ比ニ非ス今々既往数年ヲ回顧スレハ時ニ或ハ本業ノ伸縮消長ナキニ非スト雖モ其駸々乎トシテ業務改良ノ点ニ傾向スルヿハ覆うフベカラス既ニ十年前練業会ノ設立アリテヨリ以来概ネ醸造ノ方法一変シテ専らラ学理ヲ応用スルモノアルニ至レリ爾来勵精刻苦成績ノ見ルベキモノ実ニ尠シトセス今回ノ審査学理上ノ成分等ニ至リテハ同業者自ラ其検定ニ仕シテ敢テ他ノ補助ヲ仰カス亦以テ其進歩ヲ徴スヘシ


今審査ノ結果ニ依テ評下スレハ清酒中彼ノ有害ナル防腐剤ノ混和スルモノ絶テナキハ実ニ本群清酒独特ノ美質ニシテ他ニ多ク其比ヲ見ス且其成分ニ於ケル極メテ適度ヲ得タリ况ヤ学理経験ノ結果トシテ近年腐敗ヲ免カルルモノ多キニ於イテオヤ是レ需要多キヲ加ヘテ盛況ニ赴クノ兆アル所以ナリ


然リト雖モ概シテ「アルコール」分多量ニシテ旨味ノ点ニ於テ欠クル所アルハ頗ル遺憾ナリト云ハサルヲ得ス益々廣ク江湖ノ嗜好ニ適セントセバ糖類成分適量ノ醸酒ヲ望マサルベカラズ殊ニ全般ノ趨勢学理応用ノ針路ヲ採ルニ拘ハラス尚或ハ依然トシテ旧法ヲ脱セサルモノアリ醸造ノ法一ニ之ヲ杜氏ノ手加減ニ委シ偶然ノ結果ヲ頼ムカ如キハ所謂萬一ヲ僥倖スルモノニシテ頗るル危嶮ナリト云ハサルヲ得ス若夫レ学理ヲ応用スルトキハ年々一定ノ佳酒ヲ醸造スルヲ得ルノミナラス其腐敗ヲ免カルゝ効益アリ之ニ反シテ旧法ニ一任スルトキハ天為的ノ原因ニ伴ヒ時々変化ヲ来すスノ憂アリ鑒ミサルベカラズ由テ視レハ此一大特有物産ヲシテ将来益々其聲価ヲ博シ之カ進歩改良ヲ計ルハ須曳モ忽諸ニ付スヘカラサルハ忽論愈々学理ヲ応用シ酒家ノ主人躬自ラ之ニアタリ研磨講究スルカ如キマタ或ハ全群ノ結合ヲ以てテ醸造学校若クハ醸造研究所ヲ創設スルカ如キハ首トシテ切望スル所ナリ

 

<現代語に意訳>
酒類は本郡を代表する重要な産物であり、その盛衰は、そのまま郡全体の盛衰にも関わるといってよい。そのため、酒造業者の努力や世間の関心は、ほかの産物とは比較にならないほど大きい。

ここ数年を振り返れば、酒造業にも浮き沈みがなかったわけではない。しかし、業界が着実に製造方法の改良へと向かってきたことは明らかである。すでに十年前、練業会が設立されて以来、醸造方法は大きく変化し、学問的な理論を積極的に取り入れるようになった。その後、関係者が努力を重ねた結果、目に見える成果も決して少なくない。

今回の審査では、酒の成分など、学理に基づく検査についても、同業者自身が測定を行い、外部の助けを借りることがなかった。ここにも、業界の進歩を見ることができる。

審査の結果から評価すると、清酒に有害な防腐剤を混ぜたものがまったくなかったことは、本郡の清酒が持つ特筆すべき長所であり、他地域ではあまり例を見ない。また、その成分も極めて適切な状態にあった。さらに、学理と経験の積み重ねによって、近年は腐敗する酒が少なくなっている。こうした品質の向上に需要の増加も加わり、酒造業が今後ますます盛んになる兆しが見られる。

しかし、全体としてアルコール分が多く、うま味に欠ける点は、非常に残念である。より広く世間の好みに応えようとするならば、糖分などの成分を適度に含んだ酒造りを目指す必要がある。

業界全体が学理を取り入れる方向に進んでいるにもかかわらず、依然として旧来の方法から抜け出せていない者もいる。醸造をすべて杜氏の勘や手加減に任せ、偶然の結果を頼りにするような方法は、万に一つの幸運を期待するようなものであり、極めて危険だといわざるを得ない。

学理を応用すれば、毎年安定して良質な酒を造れるだけでなく、腐敗を防ぐ効果も期待できる。これに対して、旧来の方法だけに任せれば、天候など自然条件の影響を受け、年によって品質が変わる恐れがある。この点を軽視してはならない。

本郡を代表するこの重要な産業の評価をさらに高め、将来に向けて発展・改良していくことは、一刻もおろそかにできない。そのためには、ますます学理を活用し、酒造家の主人自らが醸造に携わって研究を重ねることが必要である。また、郡全体が協力して醸造学校や醸造研究所を設立することも、ぜひ実現してほしい。

 

この報告を見ると、当時の知多の酒造業の状況がかなりよくわかる。つまり「学理応用」の結果、腐敗が減ってきたこと、酒はサリチル酸を含有していないのは大変良いが、まだ“鬼殺し”が変わっておらず辛口であったこと、依然として従来からの方法で酒を造っていたものが多かったことなどである。そして醸造研究所の設立が提言されていて、それが後の弊社「豊醸組醸造試験場」の設立につながっていく。


 この報告の後、知事代理の識字、褒賞授与、出品人総代(稲生治右衛門)の当時、その他数々の祝辞があった。その中から審査事務を嘱託されていた猿若分析所技手の西村兼吉の祝辞を次号に載せます。

 

 

 

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