Contents


白老酒季121号

□薫風 〜社長便り〜
□HIDE AWAY 〜酒蔵お婿さん通信〜
□会長だより
「明治時代の知多酒10 第二回全国酒屋大会名古屋大会その2」


 

 

 

Vol.46「令和7年新年のご挨拶を申し上げます。」 

 

皆様、新年あけましておめでとうございます。昨年は格別のご愛顧を賜り、心より感謝申し上げます。 年末年始はご家族やご友人とゆっくりと過ごされたでしょうか。

澤田酒造では、今年も丸餅に角餅を重ねる我が家ならではの鏡餅をお供えし、おせちを囲んで穏やかな年越しを迎えました。新年の幕開けとともに、蔵ではまた新しいお酒造りが始まっています。

昨年12月、日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されました。
日本酒が持つ歴史や文化が世界に認められたことは、私たちにとっても大きな喜びです。今年は愛知県でも発酵文化がさらに盛り上がりを見せることでしょう。
澤田酒造でも発酵や醸造にまつわるイベントを積極的に企画し、皆様と共に楽しむ機会を増やしてまいります。

おかげさまで、暖冬の中で始まった今季の仕込みは順調に進んでいます。これからは寒の時期に入り、吟醸造りが本格化します。
杜氏たちの緊張感も高まっており、蔵全体が引き締まる季節です。出来上がるお酒をどうぞ楽しみにしていてください。

 

さて、新酒のご案内です。
1月9日(木)には「蔵人だけしか飲めぬ酒」と「あばれ酵母」の新酒が発売されます。 そして16日(木)には「若水純米吟醸の無濾過生原酒」が登場します。
フルーティで飲みやすいこのお酒は、近年とても人気があります。

さらに、23日(木)には「春うらら」を発売。
円熟した味わいが寒い時期のお燗酒にぴったりです。

毎年ご好評いただいている「純米吟醸今朝しぼり生原酒」の予約も始まりますので、ぜひお楽しみに。

 

また、今年も2月に酒蔵開放を開催いたします。
同封のチラシをご覧いただき、ぜひご家族やご友人とご一緒にお越しください。
槽口しぼりたての生原酒や甘酒の振る舞い、地元の出店など賑やかな催しを準備しております。 皆様にお会いできることを楽しみにしております。 本年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。



新春によせて。

2025年1月吉日
澤田酒造株式会社 澤田 薫

 


 

Vol.65「白老の蔵見学にぜひお越しください!」

 

昨年、蔵直売所「澤田北倉」がオープンしましたが、現在、多くの方にご好評いただいている人気のコンテンツとして「蔵見学」を随時ご予約いただけます。

ご予約は【じゃらんnet】の「遊び・体験予約」ページで「澤田酒造」と検索してください。

白老の蔵見学が特に面白いのは、引率者(社長または私)によって説明のアプローチが異なる点!

私は、参加されるお客様に合わせて内容を変更しながらも、ネットで調べるだけではわからない知多半島の酒造りや調味料の歴史的・多面的な魅力を、様々な角度からご紹介。

さらに、実際に酒造りが行われている現場では、作業者目線で白老のお酒の秘密を深掘りするプログラムをご用意しています。

また冬の酒造りのシーズンとそれ以外の季節では見学内容が異なるため、季節ごとに異なる魅力を楽しめます。
一年に2回訪れてみるのもおすすめ!

さらに、社長と私の説明スタイルの違いを体験するために、一年に4回訪れてみるのはいかがでしょうか?

見学終了後は、角打ちスペース「さかふね」で、白老のお酒を有料試飲でお楽しみいただけます。

蔵見学で得た知識をもとに味わう白老のお酒は、まるで魔法にかかったように一層美味しく、身近に感じていただけるはずです。 今年は、酒蔵開放以外のタイミングでもぜひ、酒蔵に遊びにお越しくださいませ。

 

 

 


 

その四十七
明治時代の知多酒10 「第二回全国酒屋大会名古屋大会その2」

 

会議は6月10日午前9時、前会長の挨拶から始まった。


「(前略)、諸君ガ会合ノ上ハ理論ニ偏セズ中正ニ従ヒ一己ノ私ヲ捨テコト、全国ノ公益ヲ計ラントスルハ夙トニ覚悟セラルコトト考ヘマス故、此点ニ就テ喋々シマセン」

<現代語にて意訳>
「皆さんが集まって議論を進める際には、理論に偏らず、公平中立を守り、個人の利益を捨て去り、全国の公益を図るということは、以前から覚悟されていることだと考えますので、この点についてはこれ以上詳しく述べません。」

 

と前回のような紛糾が起こることを婉曲に釘をさし、続いて

「我日本モ今日已ニ言論挃捁ノ時代ヲ去リテ自由ノ域ニ至リマシタガ、此弊ハ理論ニ走リテ目的ヲ失フコトアル、今度ノ会合ノ如キハ畢竟実業者ノ相談会ナレハ、理論ニ走ラズ一ハ同じ業ノ盛大ヲ期スルヲ以テ心トシ、一ハ日本国ニ対シ忠誠ヲ盡スヲ以テ心トシ、・・・若シ夫レ時ニ或ハ理論ニ奔リテ目的ヲ忘レ此遠来ノ大会ヲシテ立消ヘセシムルコトアリテハ将来本業進歩ノ為メニ大妨害トナル、抑モ今日ノ会合ハ国ノ為メ営業ノ為メデアル、理論ニ流レテ希望ト反対ノ結果ヲ顕ハシ、惨但タル妖雲ヲ以テ此会ヲ●(草冠に撤)フニ至リマシテハ実ニ面目ナキ次第デアル、諸君ハ自己ノ責任ヲ覚悟セラレ、我々ガ編成シタル不行届ノ原案ニ対シテ宜ク審議討論アランコトヲ望ム、・・・」

と述べている。

<現代語にて意訳>
「私たち日本も今日、言論が抑圧される時代は終わり、自由な時代になりました。しかし、自由には弊害があり、理論に偏りすぎて目的を見失うことがあります。今回の会合は実業家の相談会であるため、理論に走らず、一つには同じ業界の発展を目指すことを心がけ、もう一つには日本国に対して忠誠を尽くすことを心がけるべきです。
万が一、理論に溺れ目的を忘れてしまい、みなさん遠くから集まった大会を無駄に終わらせてしまうようなことがあれば、将来の業界の発展にとって大きな妨げとなります。そもそも今日の会合は、国のため、営業のために行われるものです。理論に流されて期待に反する結果を生み出し、惨めで不吉な影をこの会合に落とすような事態になれば、実に恥ずべきことです。
皆さんは、自分たちの責任をしっかりと自覚し、私たちが作成した不十分な原案について十分に審議し、討論していただけることを望んでいます。」

 

そして注目の会長選挙が行われようとしたとき、三宅から

「本会ノ通知日浅キガ為メニ同業代表ト云フ訳ニ参リ兼子(ネ)、一個ノ資格ニテ出会シマシタ、通知書ニ依レハ個人資格ノモノハ発言ハ出来ルモ議決権ナシトアル、・・・会長選挙ニ当リテ・・・如何シテ宜シキヤ」

という、個人の資格についての質問が出された。

<現代語にて意訳>
「この会合の通知が出された日が浅かったために、同業の代表として出席することができず、個人の資格で参加しました。通知書によれば、個人資格で参加した者は発言はできるものの、議決権を持たないと記されています。…そこで、会長選挙に際して、どのように対処するのが適切か、ご意見を伺いたいと思います。」

 

しかしこの場は議事進行の都合もあって、結局全員で投票が行われた。その結果会長は渡辺徹(灘)、副会長小堀貞吉と決定した。
その後、昼食のために一時休息があって午後2時半より議事が再開されたが、ここで新会長の渡辺も今中同様、第一回のような紛糾を繰り返さないように述べている。(以下次号)

会議法が広くいきわたっていない明治時代前半にあって、現代から見れば稚拙ではあるが、半ば手探りで真剣な議論が行われていきます。あるいは会議については当時とあまり進化していないかもしれませんね。

 

 

関連記事

明治時代の知多酒1「豊醸組の結成以前」

明治時代の知多酒2「明治時代初期の情勢」

明治時代の知多酒3「明治初期の社会情勢、自由民権運動へ」

明治時代の知多酒4「明治中期の社会情勢、豊醸組の結成」

明治時代の知多酒5「明治中期の社会情勢、豊醸組の結成2」

明治時代の知多酒6 「同盟休醸」のこと

明治時代の知多酒7「明治時代、酒造組合結成の推移」

明治時代の知多酒8 「第二回全国酒屋大会開催前に…」

明治時代の知多酒9 「第二回全国酒屋大会名古屋大会」

 


白老酒季121号の全文PDFはこちら

白老酒季121号