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蔵元の視点からガストロノミーツーリズムについて考えてみました

 

ガストロノミー世界フォーラムが2022年12月に奈良市で開催されたこともあり、ガストロノミーツーリズムへの注目度が高まっているように感じます。

 

ガストロノミーツーリズムとは、「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的としたツーリズムのことをいう。」(観光庁)とされています。

 

それぞれの地域の、気候風土に根差した食材や食文化に触れる旅行ということになります。
食材や食文化が育まれた背景がコンテンツになりうるのです。

 

地域の食文化に寄り添うお酒づくりを目指してきた酒蔵としては、自分たちの商いのベースが売れるコンテンツになりうるということで、とても興味深い傾向です。

 

 

 

白老の酒造りと地理的・歴史的な背景について


 

例えば弊社白老の酒は伝統的に「濃醇旨口」です。

 

なぜそうなったのかというと、常滑が古くから窯業で発展してきた職人の町であることが背景にあります。

 

特に江戸時代後期から明治時代にかけて、建設資材として大量に陶器の製造が行われるようになりました。
重労働の製陶職人が好むのは濃い味付けの食事。彼らの日々の食事を豊かなものにする日本酒も、濃い味付けの食事に負けない濃醇な味わいになり、白老のお酒の基調ができあがっていきました。

 

そして濃い味付けのベースになったのは、同じく醸造製品である調味料たち。
江戸中期から明治初期にかけて、知多半島は全国的にお酒の一大産地であったことはよく知られています。
最盛期には200軒を超える酒蔵がありました。

 

これらの酒蔵が使っていた道具を再利用して、味噌造りも盛んになり、味噌造りの副産物であるたまり醤油造りも盛んになり、独特の醸造文化が花開いたわけです。
南隣の美浜町では塩も作られていました。
知多半島といえば沿岸漁業も古くから盛んですから、海産物をたまり醤油や味噌で味付けするという伝統的な食文化が形成されていったのです。

 

ちなみに醸造に関係があり、知多半島から世界的な企業に発展していった例もあります。
酒造りから始まって醤油や味噌など醸造製品を手広く造って販売した盛田株式会社さんは、ソニー創業者の盛田昭夫さんのご実家でもありますが、ソニーでの開発資金に醸造で得た莫大な利益が使われていたと言われています。
お酒を絞った後に出る酒粕から酢を作り、世界的な食品メーカーに成長したミツカンさんも常滑の隣の半田市に本社がある企業です。

 

 

白老の酒造りに欠かせない地元産の原料


 

白老の酒造りは地元産の原料を重視しています。

 

日本酒の原料といえばなんといっても米。
特に地元で契約栽培されている「若水」や「夢吟香」といった酒米を中心に使用しています。

 

弊社の酒米の栽培上の特徴は、肥料や農薬の使用をできる限り抑えること。

 

酒米は一般的に大粒でタンパク質が少ないものが良いとされます。それはタンパク質成分がお酒になった時に雑味の要因になるからです。肥料はたんぱく質のもとになるためできる限り使用を抑えて育てるのが良いとされています。
知多半島はもともと肥持ちの良い粘土質の土壌であり肥料の使用を抑えることができます。
契約農家さんも肥料を抑えた栽培をしていただいています。

 

農薬も極力控えていただいています。
農薬使用は基本的に田植え前のみ。苗の時に使用する程度です。
そのために生産者さんそれぞれ様々な工夫をされています。

 

さらに弊社の商品の中には無農薬・無肥料の自然栽培米を使用した商品もあります。
大変な手間がかかる上、わずかしか取れないためたくさんは使えません。
ですが生き物が共生できる昔ながらの田んぼが地域に残っていくのは嬉しいことですし、地域の環境とつながりをもった商品を世の中に出せるのは造り手の喜びでもあります。

 

酒造りには仕込み水も大切な原料です。
弊社では江戸時代より知多半島の丘陵部に湧き出る水を私設の水道を引いて使用しています。
素直な軟水で、ふくらみのあるまろやかなこの土地ならではの酒質につながっています。井戸を保全しながら使用し続けることが、里山の環境を守ることにつながっています。また伊勢湾へ流れでた水は豊かな海を育て、漁場を守ることにもつながっていると考えています。

 

 

地産地消の生産者さんとともに目指したいこと


 

最近では酒蔵ツーリズムという言葉もあるように、酒蔵は観光資源としても注目を集めるようになっています。弊社でも先行して30年以上も前から酒蔵開放を実施し、地域の皆様をはじめ、名古屋地域からもたくさんのお客様に来場いただけるようになりました。

 

一緒に活動をしていただける食材の生産者さんも増えてまいりました。さらにもう一歩踏み出して、地産地消の生産者さんたちと一緒に、地域の生活環境を守り、食文化を守り、また地域コミュニケーションのハブとなれるような取り組みをしていきたく思います。

 

などなどいろいろ思いつくままにまとまりのないまま書いてきましたが。。。

 

 

 

難しいことはさておき、地域の食とお酒をみんなで楽しみたい。豊かな食材をいろいろな人に知ってもらいたい。そんな取り組みができればこんな幸せなことはないなと思っております。

 

最後に宣伝ですが、
「知多のガストロノミーを楽しむ会」はその第一歩です。
みんなで楽しめる会に致したく思いますのでぜひ足をお運びください。

 

「知多のガストロノミーを楽しむ会in澤田酒造」の詳細はこちらのページから

 

上の写真は過去のイベント風景ですが、こんな雰囲気の楽しい会にしたいと考えています